志村季世恵

バースセラピスト                  五感ソムリエ

プロフィール
こども環境会議
ダイアログ・イン・ザ・ダーク
 
 目以外のなにかで、ものを見たことがありますか?
 
 
 暗闇の中の対話。
 鳥のさえずり、遠くのせせらぎ、土の匂い、森の体温。水の質感。
 足元の葉と葉のこすれる枯れた音、その葉を踏みつぶす感触。
 仲間の声、乾杯のグラスの音。
 暗闇のあたたかさ。
 ダイアログ・イン・ザ・ダークは、まっくらやみのエンターテイメントです。
 参加者は完全に光を遮断した空間の中へ、何人かとグループを組んで入り、
  暗闇のエキスパートであるアテンド(視覚障害者)のサポートのもと、中を探検し、
  様々なシーンを体験します。
 その過程で視覚以外の様々な感覚の可能性と心地よさに気づき、
  そしてコミュニケーションの大切さ、人のあたたかさを思い出します。
 世界25か国・約100都市で開催され、2010年現在で600万人以上が体験したこのイベントは、
  1989年にドイツで、哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれました。
 1999年以降はボランティアの手によって日本でも毎年開催され、約6万人が体験しています。
 
 ■このプロジェクトではまっくらな中のコンテンツをプロデュースすると共に
 視覚障害者の自立とアテンド能力を高める研修を担当。高い評価を得る。
 
森を渡ってくる風
 

子供の頃、目を瞑って自転車を漕いだことがあります。
どこまで、まっすぐに走れるのかが試してみたくて。
電気を消してお風呂に入るのも好きでした。
浴槽の木の香りと立ち篭める湯気が体を包み込む、
その感覚が子供ながらに豊かに感じられ、
いつもなら早くお風呂から出て遊びたい私に
正しいお風呂の入り方を暗闇が教えてくれたかのようでした。
けれども、いつのまにか私は楽しかった遊びを忘れ、
目や耳にすっかり頼る大人になっていたのです。

ある時、夜の森に遊びに行くことになりました。
明かり一つない暗闇のなか、蒸せ返るほどの木や落ち葉や土の匂い。
そこで私は靴を脱ぐことを思い出しました。
裸足で土の上に立ち、時には寝転び、真っ暗な森の中で
「ああ、私は、地球の子であった」と自分を取り戻すことができたのです。
私は、目を使って歩くのではなく子供のときのように、足で森を歩くことができました。
土は、母親の肌のように、柔らかく温かでした。なんて豊かなことでしょう。
私は土と抱き合い空気や風と抱き合っていたのです。
子供の頃に知っていた風も戻ってきました。
風は、吹くのではなく、渡ってくるのです。

目や耳で感じたものではなく心で感じたものは深く温かでした。
私たちは、大人になっても年をとっても、まだまだ感じ、そして知ることができそうです。
限られたものしか見ること、聴くことができず、
いつのまにか小さな自分の感覚に翻弄されていた私達。
きっと何も見えない暗闇のなかで本物を感じる力を取り戻すことができるでしょう。
この「Di a l o g i n t h e Da r k 」の中で本物の自分とも出会えるかもしれません。
素敵な自分の感性に耳を澄ますときを、どうぞご自分にプレゼントしてみてください。
きっと、人という生き物は、すばらしいものだと感じることができるでしょう。
 
志村季世恵